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税法最前線:交際費100%損金は26年3月決算から(2013年2月11日号・486) | 法律情報サイト e-hoki
一般の方にはピンとこないかもしれないが、個人的には平成25年度の税制改正の中でこれが実務に与える影響はかなり大きいと思う。
何故なら、税務調査の現場では当たり前のように他の科目に交際費に該当する支出が無いかをチェックされるためである。
目的はもちろん損金算入を否認して課税所得(≒法人税)を増やしたいからだ。
そのため税理士は税務調査で否認されないように企業が行う支出に関して、細かくチェックすることになる。
「飲食店の領収書がありますが、これってどなたと行かれたんですか?」
毎回毎回聞かれる経営者もうんざりだろうが、聞いている税理士だってうんざりなのだ。
何しろ同じ宴会代でも取引先と行けば交際費なのに、従業員全員参加のお疲れ様会は福利厚生費なる。
また、交際費とその周辺費用(寄附金・広告宣伝費・福利厚生費・売上値引き・支払手数料)の区分も非常に複雑で分かりにくい。このテーマ一つで何冊も本が出ているぐらいのテーマなのである。
ちょっとしたポイントが交際費かそうでないかを分けることになるため、細かいことでもきちんと確認を取る必要がある。
今回の改正で中小企業は年800万円以下なら、たとえ交際費に該当する支出が交際費以外の科目にまぎれていたとしても、それを持って税務上否認という話にはならなくなる。
これで巷の税理士のストレスがかなり軽減されることになるだろう。
次はそうお前だ。寄附金!
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平成25年2月1日に当事務所で経営革新等支援機関の認定を受けた。
経営革新等支援機関とは、中小企業が安心して経営相談を受けられるために国がお墨付きを与えた公的な機関である。
近年、中小企業を巡る経営課題が多様化・複雑化する中、中小企業支援を行う支援事業の担い手の多様化・活性化を図るため、平成24年8月30日に「中小企業経営力強化支援法」が施行され、 中小企業に対して専門性の高い支援事業を行う経営革新等支援機関を認定する制度が創設されました。
認定制度は、税務、金融及び企業財務に関する専門的知識や支援に係る実務経験が一定レベル以上の個人、法人、中小企業支援機関等を、経営革新等支援機関として認定することにより、 中小企業に対して専門性の高い支援を行うための体制を整備するものです。
(中小企業庁HPより抜粋)
昨年10月から申請受付が始まった同制度であるが、認定は税理士・公認会計士を中心として全国でされており、認定を受けた機関は平成25年3月末現在で6,740機関となっている。
中小事業者は認定を受けた支援機関を利用することによって、次のような支援を受けることができる。
<補助金>
・ものづくり補助金
(目的)
「中小ものづくり高度化法」22分野の技術を活用した事業であり、競争力強化(試作品開発、小口化・短納期化への設備投資等)を行う事業に対する補助
(対象経費と金額)
原材料費、設備導入費、試作開発費(人件費)等。補助率2/3。最大で1,500万円の投資に1,000万円の補助
(認定支援機関の役割)
事業計画の実効性の確認(認定支援機関の確認を受けることが支給要件)
・創業補助金
(目的)
独創的な商品やサービスの地域での起業・創業(地域需要創造型起業・創業、第二創業)に対する補助
(対象経費と金額)
事業費、販路開拓費、認定支援機関が実施する経営支援に対する謝金等。補助率2/3。最大で500万円の補助。
(認定支援機関の役割)
事業計画の実効性の確認(認定支援機関の確認を受けることが支給要件)
・経営改善支援
(目的)
外部専門家の支援を受けた経営の立て直しを支援。
(対象経費と金額)
経営改善計画策定支援に要する費用。補助率2/3。最大で200万円の補助。
(認定支援機関の役割)
経営改善計画の策定支援(認定支援機関の経営支援を受けて計画策定することが支給要件)、策定後3年間のモニタリング。
・国内外販売力強化支援モデル事業
(目的)
中小企業・小規模事業者に対して国内外への販路開拓サービスを提供する事業者に対する補助。
(対象経費と金額)
人件費、旅費、設営費、広報費、外注・委託費等。補助率1/2。事業規模1,000〜5,000万円を想定
(認定支援機関の役割)
認定支援機関と共同で行う事業に限る。
<貸付け>
・経営支援型セーフティネット貸付・借換保証制度
(目的)
一時的に業況悪化を来している中小企業・小規模事業者に対して、日本政策金融公庫、商工中金が融資を行う。
(認定支援機関の役割)
認定支援機関等の経営支援を受ける場合、最大で基準利率から0.6%(運転資金のみ)引き下げられる。
<税制優遇>
・特定中小企業者が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除(措置法10の5の3)
(平成25年4月1日〜平成27年3月31日までの取得)
(目的)
中小企業の経営改善に向けた設備投資を促進するため
(金額)
店舗の改修等に伴って取得した器具備品(30万円以上)及び建物附属設備(60万円以上)の取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除
(認定支援機関の役割)
認定支援機関による指導及び助言を受けて設備投資を行うことが要件
政府としても中小企業支援にこれまで以上に積極的な姿勢を見せており、今回の認定制度もその一環と言える。
支援機関の認定については今のところ、書類に不備が無いもの以外はほぼ認定しているようであるが、無制限に認定するつもりはないようなので、中小企業支援に積極的に取り組むことを考えている専門家先生は一刻も早く申請されることをお薦めする。
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平成24年2月1日に中小企業関係者等が主体となって設置された「中小企業の会計に関する検討会(中小企業庁及び金融庁が共同事務局)」より、「中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)」が公表された。
<参考>
中小企業庁:中小企業の会計に関する基本要領
http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/youryou/index.htm
中小会計要領は経理体制が整っていない中小企業に対して、「経営者が財務情報に基づき経営判断を行うことにより、企業の経営力や資金調達力の強化や取引拡大に繋がること」を期待して作成された新しい会計処理のルールである。
中小企業向けの会計基準としては、既に日本税理士会連合会、日本公認会計士協会、日本商工会議所及び企業会計基準委員会の4団体により作成された「中小企業の会計に関する指針(中小指針)」が存在するのだが、中小会計要領では、各論の項目数が14項目であるなど、中小指針(同18項目)に比べてより簡便的な処理を認めたものである。
元々、中小企業は大企業に比べて、決算書を開示すべき利害関係者が少ないため、顧問税理士の指導のもと法人税の基準に従って会計処理を行う場合が多い。
要するに株主等より、税務署向けの決算書を作成しているのである。
しかしながら、金融機関からの要請や経営者に役立つ決算書作成要望の高まりにより、決算書の重要性は以前に比べて非常に高まってきている。
中小会計要領はそのような中小企業の要請に応えるべく作成された会計ルールであり、中小企業の実態を踏まえてかなり簡便的な処理を認めている印象である。
金融機関が融資審査する場合や、我々税理士や中小企業診断士が経営分析(同業他社分析等)する場合等も基準となる会計ルールが決められているのは非常にありがたい。
また、会社側も独自の判断で経理処理を行って信頼性の低い決算書を作成するよりも、これらのルールに従って決算書を作成した方が経営状態の把握に有効であり、作成の手間よりも作成したことによるメリットの方が大きいだろう。
しかし対象となる中小企業に多少の差異はあるとは言え、同じ中小企業向けの会計ルールである中小指針がありながら、さらに中小会計要領を作成するのは、ダブルスタンダードというか、余計な混乱を招く元だと思うのだが、それは考えすぎなのだろうか?
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平成23年12月2日に東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律第117号)が公布された。
これにより所得税の源泉徴収義務者は、平成25年から源泉所得税を徴収する際、復興特別所得税を併せて徴収し、源泉所得税の法定納期限までにその復興特別所得税を源泉所得税と併せて国に納付しなければならなくなった。
詳細は以下のとおり。
1.期間
平成25年1月1日から平成49年12月31日まで(25年間)
2.源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額
支払金額等×合計税率(所得税率×102.1%)=源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額*
*算出した所得税及び復興特別所得税の額に1円未満の端数があるときは、その端数を切り捨てる。
<報酬・料金等の源泉徴収の例>
(1)講演料として100,000円を支払う場合(所得税率10%の場合)
100,000円 × 10.21%(所得税率10%×102.1%)= 10,210円(算出税額)
(2)講演料100,000円を税引手取額として支払う場合(所得税率10%の場合)
100,000円 ÷ (100 − 10.21)% = 111,370円(支払金額)
111,370円 × 10.21% = 11,370円(算出税額)
<給与等の源泉徴収について>
給与等については、平成25年分以後の源泉徴収税額表に基づき、所得税と復興特別所得税の合計額を徴収し、1枚の所得税徴収高計算書(納付書)で納付する。
平成25年分の源泉徴収税額表は国税庁のホームページ、又は税務署から送られてきている年末調整書類にも同封されている。なお平成25年からは年末調整も所得税と復興特別所得税の合計額で行う。
その他、退職所得や利子・配当等に係る所得税にも復興特別所得税が課されることとなるので、注意が必要なのだが、告知不足というか周知期間が短かったのか一般納税者や報酬を受け取る側の(税理士業以外の)士業の先生方に把握されているとは言い難い状況だ。
平成24年分以前の源泉徴収税額表をそのまま使って納税してしまう企業の経理担当者や源泉税率10%で請求書を作って、顧問先とひと悶着起こしてしまう専門家等、トラブルが多発することが想像される。
滞納防止には効果的なのだろうが、企業の事務に多大な負担をかける源泉徴収+年末調整制度もそろそろ見直しの時期に来ているのかもしれない。
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12月に税理士試験の受験生向けに、税理士試験の勉強が実務にどう関わってくるのかをテーマに講演をすることとなった。
今回のコラムはその準備も兼ねて、勉強と実務の違いについて考えをまとめたいと思う。
実務で活躍されている先生方の中には「勉強なんか仕事に何の役にも立たない」と思っている方がいるのは理解している。
確かに試験に合格したからといってすぐに実務が出来るほど現実は甘くは無い。
しかし勉強が全く無駄というのは言い過ぎであるように思う。
確かに受験だけをしていると計算方法は知っていても申告書にどう表現していいか分からない。計算根拠となる資料をどう集めればいいのか分からないということが起こりうる。
しかし、逆の言い方をすれば、実務だけをしていると、中小企業でよく出てくる取引については非常に詳しいが、たまにしか出てこないイレギュラーな取り扱いをする処理については対応しきれていない場合が出てくる。
例えば、法人税の所得税額控除、預金利息の源泉所得税の取り扱いについては別表の記載も含めほとんどの税理士・税理士事務所職員が知っているが、株の配当源泉について保有株数の期中変動がある場合の控除可能額を個別法・銘柄別簡便法で計算しろと言われて、何も見ずにできる人はごく少数だろう。
しかし試験では当然のように出てくる論点であるから、法人税法受験生であれば殆どの人がその計算方法を知っているのである。
要するに前述の「受験勉強しているより、実務している方が偉い」的な言い方が出てくるのは、考え方として少し的外れだと言える。差が出てくるのは単純な理由で、試験勉強も実務も同じ条文に基づいて行うわけだが、使う知識が少しずれているだけのことなのである。
個人的には、若いうちに受験勉強でしっかりと税法の基礎を学んだ上で、税理士事務所に就職すれば、実務も効率よく身につけることができると思う(ただ、ある程度年齢が気になる方は就職の問題もあるので、先に実務経験を積むというのも一つの方法ではある。)。
私自身は先に実務をやったクチだが、退職してから税法の勉強をして「あの処理あれで合ってたのかな・・・。」と不安になったこと数知れず・・・。
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電子申告を行う際に必要となるのが電子証明書(が格納されたカード)とそれを読み取るICカードリーダライタである。
税理士が電子申告を行う際には通常、日本税理士会連合会電子認証局より発行される税理士専用の電子証明書を使って電子署名を行う。
現在使用されている税理士電子証明書は第二世代で2008年に発行されたものである(第一世代は電子申告が開始された2004年発行〜2008年9月まで有効)が、この有効期限が来年2013年の3月31日までとなっている。
<参考URL>
「中嶋聡税理士事務所ビジネスマネジメントブログ 新電子証明書げっと(2008/10/29)」
http://nkj-tax.cocolog-nifty.com/blog/2008/10/post-c4d6.html
税理士会では今年の8月上旬から各地域ごと時期を分けて案内状と電子証明書の発行申請書を税理士会員に送付しているようである(近畿会は9月下旬の予定なのだが9月28日現在未着・・・)。
第一世代から第二世代への切り替えも既に経験済みなので、新電子証明書の取得に関しては特に問題がないと思われる。
ところが問題がオオアリなのが、ICカードリーダライタ。
どうやら、最初に電子申告を始めたときから使用しているサクサ(旧田村電機)製のリーダライタでは第三世代の電子証明書を読み込めないらしい!
電子データの読み取りという機器の仕組自体はそう複雑ではないと思うので、なんとかソフトウェアのバージョンアップ等で対応して欲しいものだが、暗号化のあたりでひっかかるのだろうか?
愚痴っていても読めないものは読めないので、新しいリーダライタを購入する必要が出てきた。
どれにしようか現在検討中。税理士会の方で動作確認済みの機器リストが既に回ってきているのでこの中から選ぶのが現実的なところだろう。
もちろん機器の購入費用は自腹なのだが、阪奈税協が毎年やってくれている1万円無料書籍配布事業のリストにICカードリーダライタが載るらしい。
それで購入してもいいのだが、提供価格がNTTコミュニケーション製のSCR331CLで2,940円。
いやいやアマゾンで買った方が安くねえっすか?
しかも評価低いし。
個人的にはソニー製のRC-S330/RC-S370あたりがFelicaも使えていい感じなのだが、生産終了と販売終了て。次の世代のRC-S380は動作確認済みリストに載ってないし(大丈夫だとは思うが)。
そんなこんなで、まだまだ検討中が続きそうである。
時間的には確定申告明けまで猶予があるので、今後の対応状況をしっかり見極めて購入したいと思う。
だれか人柱に・・・。
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社会保障・税一体改革関連法案について平成24年8月10日、参議院において賛成多数により可決・成立した。
昨年12月に公表された素案の段階から非常に具体的な記述が見られたため、どうなることかと動向に注目していた。
法案の国会提出は3月30日だったのだが、消費税増税に対する野党の反対等、途中ちょっとぐだぐだになりかけていたので一時成立が危ぶまれていたが、ここにきて一気に法案成立に持っていった感がある(所得税・相続税・贈与税等については先送り)。
内容としては、ほぼ素案通りといった形で特に驚きはないのだが、法案の成立にあたって条文にまで落としこんだ形で公表されているので、条文の細かい表現等が気なる専門家の方は、是非財務省のHPで確認していただきたい。
<参考URL>
第180回国会における財務省関連法律
http://www.mof.go.jp/about_mof/bills/180diet/index.htm
「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案」
個人的には基準期間における課税売上高等を計算するときの売上返還に係る消費税の税抜処理について、これまで
「売上返還−税込売上返還×4/105×125/100=税抜売上返還」 でやっていたのが、
「売上返還−税込売上返還×6.3/108×80/63=税抜売上返還」 になる等の実務上の細かい計算パターンが気になるところである。
(平成27年10月1日以後は「売上返還−税込売上返還×7.8/110×100/78」 )
念のため、消費税の改正点は以下のとおり。
〔1〕消費税
1) 税率引き上げ
イ 平成26年4月1日 6.3%(地方消費税と合せて8%)
ロ 平成27年10月1日 7.8%(地方消費税と合せて10%)
(注1)この改正は、平成26年4月1日(ロについては平成27年10月1日)以後に行われる資産の譲渡等及び保税地域から引き取られる外国貨物について適用する。なお、工事の請負等について所要の経過措置を設ける。
2)課税の適正化(事業者免税点制度)
その事業年度の基準期間がない資本金1,000万円未満の新設法人のうち、その事業年度開始の日において他の者により当該新設法人の株式等の50%超を直接又は間接に保有される場合で、かつ、当該他の者及びその特殊な関係にある法人のうちいずれかの者の課税売上高が5億円を超える場合には、当該新設法人の基準期間がない事業年度については、事業者免税点制度を適用しないこととする。
(注)この改正は、平成26年4月1日以後に設立される法人について適用する。
なお素案に盛り込まれていた、以下〔2〕所得税増税、〔3〕相続税増税、贈与税の見直しについては衆議院において修正され、平成25年度税制改正において議論する旨の規定が附則に設けられ、実質的に先送りされた。
〔2〕所得税
現行の所得税の税率構造に加えて、課税所得5,000 万円超について45%の税率を設ける。
(注)この改正は、平成27年分の所得税から適用する。
〔3〕資産課税
相続税の課税ベース及び税率構造について、次の見直しを行う。
イ 相続税の基礎控除
(現行)
5,000万円+1,000万円×法定相続人数
(改正案)
3,000万円+600万円×法定相続人数
ロ 死亡保険金に係る非課税限度
(現行)
500万円×法定相続人数
(改正案)
500万円×法定相続人数※
※未成年者、障害者又は相続開始直前に被相続人と生計を一にしていた者に限る。
ハ 相続税の税率構造
(現行)
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15%
5,000万円以下 20%
1億円以下 30%
3億円以下 40%
3億円超 50%
(改正案)
1,000万円以下 10%
3,000 円以下 15%
5,000万円以下 20%
1億円以下 30%
2億円以下 40%
3億円以下 45%
6億円以下 50%
6億円超 55%
(注)イ〜ハの改正は、平成27年1月1日以後の相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税について適用する。
消費税の税率改正は直接事業者の納税額に関わるため多大な影響を及ぼす。
近年の税制改正は自民党政権時代と異なり、いつ法案が成立するかが読めないので、気が抜けない。
知らない間に重要な条文が成立していたということの無いように税理士であっても国税庁、財務省のHPチェックが欠かせなくなってきているのである。
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昨年の社会保障と税の一体改革から始まった消費税の増税議論が大詰めを迎えようとしている。
増税に反対する意見としては、所得の低い人ほど収入に対する税負担の割合が増えてしまうという消費税の逆進性を指摘するものが多いようだ。
しかしここに「消費者は本当に消費税を負担しているのだろうか」という消費税法の根幹に関わる疑問がある。
消費税法導入の趣旨は間違いなく、消費者が消費税を負担し、事業者が納税義務者となって消費者から集めたお金を納税するというものであった。
しかしながら、消費税法の条文には、事業者が納める消費税法を消費者から預かった消費税とはしておらず、「課税資産の譲渡等に係る消費税額」又は「課税標準額に対する消費税額」と規定しており、言いかえると課税取引となる売上(課税売上)に対して課される消費税という表現をしているのみで、「消費者から預かった」とはどこにも記述されていない。
また、東京地裁平成2年3月26日判決において、国は「事業者が取引の相手方から収受する消費税相当額は、あくまでも当該取引において提供する物品や役務の対価の一部」と主張し、さらに同判決においても「消費者の負担する消費税分は、その本質が対価に過ぎない」と表現されたのである。
実際の納税額の計算も、事業者が商品の販売価格に消費税分を上乗せしている・していないに関わらず、(売上として受け取った金額)×100/105で課税標準額を計算し、これに4%(国税)を乗じて「課税標準額に対する消費税額」を計算してしまう。
つまり、販売価格に転嫁できず、消費者から消費税を預かっていない事業者であっても、納税負担は生じてしまうのである。
この結果、立法趣旨は消費者負担の間接税にも関わらず、条文では法人税や所得税のような(極めて企業課税的な)直接税の性格を持つという、理解し難い税目となってしまっているのだ。
これが消費者や事業者はもちろんのこと、現役税理士の中にも誤解を生じる(*)原因となっている。
今回の税率アップに伴う議論も厳格さを追い求めるあまり、過度に複雑化してしまわないかとう不安がある。
過去の税制改正を振り返ってみても、改正される度に税額計算は複雑化し、税理士の悩みのタネは増え続けている。
複雑すぎる税法は百害あって一利なし。
*現役税理士の方にも消費税の仕組みを「消費者から預かった消費税から会社が仕入れ等の際に仕入れ先に支払った消費税を差し引いて納税額を計算するんですよ」と説明しているケースは多いと思う。一番分かりやすい説明であるため、私自身も顧問先に説明する際はよく使うが、上記の内容を理解せずに使っている方もいるのではないかと思う。
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パーマネントトラベラーという言葉をご存知だろうか。
直訳すると永遠の旅人、書籍等で紹介されるときには「終身旅行者」と呼ばれることが多いようである。
そしてその定義は一つの国に長期間滞在するのではなく、何ヶ月かおきに居住する国を変えて生活する人々を指し、それは主に節税を目的として行われるという。
居住者か非居住者かは、形式的には滞在日数で判定することになるため、終身旅行者はまずそれぞれの国で居住者にならないように滞在日数を調節する。
例えばA国で183日以上滞在すれば居住者となるのであれば、その日数が過ぎる前に他の国へ出国するなど。
各国によって税制は異なるが、基本的に所得税・住民税などはその国の居住者に対して課される税金であり、どの国でも居住者にならないことによって税金を免れようとするのが、元々の発想であった。
ところが、最近では、日本のように居住者については発生する所得全て(国内所得・国外所得)に対して税金が課されるのに対し、非居住者でも国内で発生した所得に対してだけはその国の税金が課されるように規定されている国が増えてきている。
日本を例に挙げれば、折角滞在日数等を調整して非居住者になっても、日本国内で所得(不動産の貸付や株の売買等)が発生していれば、その分は日本の所得税が課されるのである。
したがって、真剣に「終身旅行者」となろうと考えるのであれば、所得を発生させる国を所得税の発生しない国(タックスヘイブン)にしておかなければならない。
日本国という視点で考えると富裕層がこぞって海外脱出を図ってしまうと税収が激減してしまうことになるため、深刻な問題として捉えているようである。
事実、国税庁HPのタックスアンサーでも「終身旅行者」に釘を刺すような関する記述がある。
No.2012 居住者・非居住者の判定(複数の滞在地がある人の場合)
1 居住者と非居住者
わが国の所得税法上、「居住者」とは、国内に「住所」があり、または、現在まで引き続いて1年以上「居所」がある個人をいいます。居住者(非永住者を除く)は、所得が生じた場所が国の内外を問わず、その所得についてわが国において所得税を納める義務があります。なお、居住者のうち日本国籍がなく、かつ、過去10年以内の間に国内に住所又は居所を有する期間の合計が5年以下である人を「非永住者」といいます。非永住者は、国内において生じた所得とこれ以外の所得で日本で支払われたもの又は国外から送金されたものについてわが国において所得税を納める義務があります。
また、「非居住者」とは、居住者以外の個人をいい、日本国内で生じた所得(国内源泉所得)に限って所得税を納める義務があります。
2 住所と居所
「住所」とは、「各人の生活の本拠」をいい、国内に「生活の本拠」があるかどうかは、客観的事実によって判断することになっています。
また、「居所」とは、「その人の生活の本拠という程度には至らないが、その人が現実に居住している場所」とされています。
3 複数の滞在地がある人
ある人の滞在地が2か国以上にわたる場合に、その住所がどこにあるかを判定するためには、例えば、住居、職業、資産の所在、親族の居住状況、国籍等の客観的事実によって判断することになります。
(注)滞在日数のみによって判断するものでないことから、外国に1年の半分(183日)以上滞在している場合であっても、わが国の居住者となる場合があります。
1年の間に居住地を数か国にわたって転々と移動する、いわゆる「永遠の旅人(Perpetual Traveler, Permanent Traveler)」の場合であっても、その人の生活の本拠がわが国にあれば、わが国の居住者となります。
外国(A国)の居住者となるかどうかは、A国の法令によって決まることになります。A国で居住者と判定され、わが国でも居住者と判定される場合、租税条約では、二重課税を防止するため、居住者の判定方法を定めています。どちらの国の居住者となるかを判定するに当たっては、わが国とA国との租税条約によりますが、国籍をひとつの判断要素としている条約もあります(日米租税条約等)。なお、必要に応じ、両国当局による相互協議が行われることもあります。
ここ数年の消費者金融会社の自社株贈与事件、著名翻訳家の所得税課税事件等は、単純に滞在日数で判定するのではなく、生活の本拠(実質的な活動)がどちらで行われていたかに重点をおいた結果と言えよう。
(その後、消費者金融会社の自社株贈与に関しては、最高裁で納税者の主張が認められて勝訴している)
上記の事件などはその額が巨額であったこともあり、見せしめ感が強いものであるが、実際のところ「生活の本拠」かどうかは、税務当局の判断も少なからず入るということであるため、「終身旅行者」をお手軽な節税手段として使うにはあまりにリスキーである。
もしあなたが「終身旅行者」になって日本の税金を払いたくないのであれば、それこそ日本を捨てる覚悟がなければ、うまく行かないだろう。
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平成18年の会社法の改正により、有限会社が廃止にされたのと入れ替えに新しい会社形態である「合同会社」制度が創設された。
合同会社のメリットは設立・運営コストが比較的安いということ。
まず設立については、定款認証が不要であり公証人役場に支払う認証手数料(株式会社5万円)が不要、かつ登録免許税が6万円(株式会社15万円)。このため専門家に依頼した場合でも登録免許税込で10万円前後で済んでしまう(株式会社は30万円前後が相場)。
運営に関しても、株式会社のような決算公告義務や役員改選の義務がなくそれらのコスト(公告、登記費用)が不要である点がメリットとして考えられる。
また株主等から出資を受け入れる場合、株式会社では出資額の2分の1以上を資本金に組み入れることが強制されている(資本金1/2、資本剰余金1/2等)が、合同会社ではそのような資本金規制がないため、全額を資本剰余金とすることが可能である(*)。
*商事法務1772 P25
資本金が増加すれば登記が必要になるし、税務署・府税事務所、市役所税務課にそれぞれ届出が必要になるので、これは運営上大きなメリットと言える。
これは特に最初は小さく作って、取引量が増えてきたら何回かに分けて追加出資を募ろうと考える会社には金銭的にも、手続的にも大きなメリットといえる。
一方デメリットとしては、株式会社に比べ信用度が劣るという点と、出資者(社員)が増えると意思決定に時間がかかる場合があるという点が挙げられる。
このようなメリット・デメリットを考えると専門家が集まって仕事を行う場合や創業期のベンチャーなどの受け皿という印象の強い合同会社ではあるが、運営コスト等の面から考えても資産家の相続税対策のための資産管理会社として使える制度ではないだろうか?
信用度は気にしなくてもいいし。一人社員にすれば意見対立も気にしなくていいし。
意外と専門家に多いのだが、新しい制度は不明点が多いためついつい、使うのを躊躇いがちである(一種の自己防衛本能といえよう)
ただし、使ってみなければメリット・デメリットも分からない。
新しい制度は食わず嫌いせずに、まずは使って見ることから始めるべきだろう。
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昨年平成23年11月30日に成立、同12月2日より公布・施行された『経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律案中修正』(いわゆる23年度税制改正法案の第二弾)であるが、注目は更正の請求に関する改正であった。
更正の請求期間の延長(1年→5年)に関しては以前このコラムでも紹介したところであるが(紹介したとおり成立)、その他にも「更正の請求範囲の拡大」をする以下の2点の改正が盛り込まれていた。
1)当初申告要件が廃止された措置
2)控除額の制限が見直された措置
具体的に説明すると、1)の当初申告要件については、従来、法人税の「受取配当等の益金不算入」の措置や相続税の「配偶者に対する相続税額の軽減」の規定は原則として確定申告書に、適用を受ける金額の記載がある場合に限り適用を認められており、確定申告で記載されていなければ、その後の修正申告や更正の請求で適用を受けることができないというものであった。(配偶者に対する相続税額の軽減について当初申告時に未分割であった相続財産が分割された場合等には適用を受けることができる場合もあり。)
これが今回の改正で、確定申告後でも修正申告や更正の請求時点でこれらの適用を受けることができるようになったというものである。
一方、2)控除額の制限とは控除等の金額が当初申告の際の申告書に記載された金額に限定されるというものであった。
例えば、所得税の青色申告特別控除は事業所得者等が複式簿記を採用することによって特典的に所得から最大65万円が控除可能となる制度であるが、控除前の事業所得が65万円に達しなかった場合にはその達しなかった金額までが控除の限度となる(例:売上1000万円、必要経費等950万円で控除前所得が50万円の場合、青色申告特別控除は50万円が限度)。
そして、後日修正申告等があって事業所得等の金額が65万円を超えることとなっても、青色申告特別控除は当初申告の際に記載された金額に限定されるため、65万円まで増やすことができなかったのである(当初50万円の青色申告特別控除を受けて所得0円。後日修正申告により控除前所得が50万円→65万円になっても事業所得の金額は65万円-65万円=0円とはならず、65万円-50万円=15万円となってしまう)。
それが、今回の改正で、更正の請求により、適正に計算された正当額まで当初申告時の控除等の金額を増額することができることとされた。
まぁ納税者から見れば当たり前といえば、当たり前なのであるが、税務署の税務執行面を配慮して過去の申告の内容の修正に及び腰だったのだ(要するにめんどくさかった?)。
税務調査で非違(修正)事項を見つけても納税者に「あっこれの適用受けてなかったから今からでも使えますよね!?じゃあ修正金額と比較してチャラですね。」とか言われると「後だしジャンケンすんなよ!(ムッキー!)」という思いがあったのやもしれない。
後だしジャンケンということで言えば、平成23年の税制改正大綱には「利用するかしないかで、有利にも不利にもなる操作可能な措置」として減価償却費や引当金の損金算入措置についても当初申告要件を廃止するように記載されていたが、今回の改正に関してはそれらの項目が除外されている。
確かに「赤字になりそうだから」ということで税務上減価償却せず、税務調査で指摘を受けたからあわてて計上するって事では後だしジャンケンの何ものでもないし、税務調査自体が成り立たなくなってしまうという事情からの除外ということでだろう。
いずれにしろ、当然受けられるべき措置が受けられるようになったのであるから納税者の権利確保という意味ではいい改正であったと感じる。
なお、更正の請求にあたっては更正請求書に更正の理由の基礎となる「事実を証明する書類」の添付義務が明確化されているので注意されたし。
まぁこれまでも証明書類を出さないと更正してもらえなかったので、実務上は変更はないのであるが、今までの「なぁなぁ行政」ではなく、更正の請求制度自体の手続きオープン化の一環としての措置だろう。
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法人税Q:経営セーフティ共済(旧:中小企業倒産防止共済)について教えて下さい。
解約すれば掛金の全部又は一部が返金されるにも関わらず、支出した掛金の全額が法人税計算上損金算入又は所得税計算上必要経費計上が認められている経営セーフティ共済。
そのせいか中小企業、個人事業主には(節税目的で?)広く利用されている制度である。
しかし、その損金算入又は必要経費計上は無条件に認められている訳ではなく、法人税では確定申告書に必要事項を記載した別表10(9)(特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書)の添付と適用額明細書(平成23年4月1日以後終了する事業年度から)への記入が必要であった。
一方所得税では、租税特別措置法第28条第2項において確定申告書に必要事項の記載がある明細書の添付があることが必要経費に計上する要件とされている。
ところがその明細書、法人税と異なり様式が法定化されているわけではない。つまり必要とされている項目さえキチンと記載されていれば様式はどうでもいいという事。
でも、好きにしていいよと言われるとかえって迷ってしまうもの。
日本人の悲しい性である。
そんなあなたに、経営セーフティ共済の実施主体である独立行政法人 中小企業基盤整備機構がそのHPにて明細書の様式を例示しているのでご紹介したい。
<独立行政法人中小企業基盤整備機構HP よくある質問>
掛金を必要経費に算入するには、どうすればいいですか
旧:倒産防止共済の時代にはこの明細書の例示は無かったように記憶しているので、やはり問い合わせが多かったのでHPで公開することにしたのだろう。
このような情報はどんどん公開してもらった方が利用者側も機構側も時間の無駄が省けるので、お互いにメリットがあると思う。
逆に官公庁などで分かりにくいサイトの構成をしていたり、情報が充分に公表されていなかったりすると、必要以上にイラっとしてしまうのは私だけだろうか。
どこの官公庁とは言わないが…。ねぇ社会保険関係の…。
(ちなみに国税庁は官公庁の中では情報公開を頑張っている方だと思うが、税法自体がグレーゾーン多過ぎなのでカバーできていないものが多々あるのは致し方ないところか…。)
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税制改正は毎年行われるが、その成立が具体化するのは、政府が税制調査会等での議論を経て年末に行われる税制改正大綱の閣議決定からである。
閣議決定された法案は2月頭に国会に提出され、3月後半に可決・成立。4月1日から施行というのが政権交代後の一般的な流れであった。
ところが、平成22年7月の民主党参院選の大敗による「ねじれ国会」、さらに昨年3月の震災も加わり、法案成立の流れに大きな影響を及ぼしている。
本来ならば3月中に全て成立するはずだった改正法案だが、平成23年3月31日に成立したのは租税特別措置法のつなぎ法案(とりあえずの延長)に留まった。
その後は、大綱の内容を分割して6月に第一弾、12月に第二弾を成立させるという、野党の顔色を窺いながら成立しそうな法案から小出しにするという手法がとられたのである。
結果、当初の税制改正大綱には記載されていたものの成立しなかった法案が多数が存在することとなった。
平成23年におけるそのような状況を受け、平成24年度の税制改正大綱の中身は、やみくもに各省の要望事項を記載するのを避け、平成23年度の積み残し分のうち、ある程度野党と協議の余地があるものを中心に記載することとなった。
そのため、平成24年度税制改正大綱では、サプライズ的な内容がほとんどなかったが、その代わり長期的な政策ビジョンを語る文書として平成24年1月6日に社会保障・税一体改革の素案が取りまとめられた。
素案によると今回の社会保障・税一体改革は「社会保障の機能強化・機能維持のための安定財源確保と財政健全化の同時達成を目指すもの」と位置づけられており、前半部分は確かに社会保障制度改革の内容について記載されている。
しかし、後半の税制改正の内容を見ると平成23年度の税制改正大綱に記載されていたが、平成24年度の税制改正大綱では、すっかり消えてしまっていた相続税の増税(基礎控除の引き下げ)等が記載されており、第二の大綱とも呼べそうな内容であった。
したがって、今まで一つしかなかった大綱を実現できそうな現実的なものと、野党の反対が必至で長期間の議論が必要なものに分けたという印象を受ける。
巷では、一体改革の消費税の増税がクローズアップされているが、それ以外にも相続税の増税や納税者番号制度(マイナンバー)の導入等、具体的な改正案が盛り込まれている。
はてさて、今年の税制改正の流れはどうなることやら。
昨年と同じように、ほとんど来年に積み残しということの無いように、与野党の真摯な議論と具体的な行動力が期待される1年である。
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養老保険に纏わる税金の話。
法人が支払った養老保険に関する保険料の取り扱いは、法人税法基本通達9−3−4に契約形態別に以下の通り記載されている。
イ.保険金受取人=死亡保険金:法人、生存保険金:法人
払込保険料の全額を資産計上
ロ.保険金受取人=死亡保険金:従業員の遺族、生存保険金:従業員
払込保険料の全額が従業員(役員及び使用人)に対する給与
ハ.保険金受取人=死亡保険金:従業員の遺族、生存保険金:法人
払込保険料の2分の1資産計上、残り2分の1は期間の経過に応じて損金算入(ただし役員・部課長等その他特定の使用人のみを被保険者としている場合には給与とされる)
上記のうちハ.がハーフタックスプラン(1/2損金プラン)と呼ばれる契約形態で、以前は法人税の節税目的で使われていたものである。
これをさらに応用して(というか通達の穴を利用して)、ハ.の生存保険金と死亡保険金の受取人を逆にしたものが逆ハーフタックスプランと呼ばれる商品である。
ニ.保険金受取人=死亡保険金:法人、生存保険金:従業員
逆ハーフタックスプランでは、2分の1を法人で損金算入、もう2分の1を従業員に対する給与として処理し、全額損金算入ができるという謳い文句で、広く募集が行われていた(もちろん法律上の明文規定は無し)。
しかも逆ハーフタックスプランでは、満期時の生存保険金を従業員が受け取る際の一時所得の計算上、所得税法基本通達所得税基本通達34−4を利用して、給与課税されていない保険料部分(法人で損金算入された2分の1部分の金額)も収入金額から控除して一時所得の計算ができるというものであった。
所得税法基本通達所得税基本通達34−4 令第183条第2項第2号又は第184条第2項第2号に規定する保険料又は掛金の総額には、その一時金又は満期返戻金等の支払を受ける者以外の者が負担した保険料又は掛金の額(これらの金額のうち、相続税法の規定により相続、遺贈又は贈与により取得したものとみなされる一時金又は満期返戻金等に係る部分の金額を除く。)も含まれる。
(注) 使用者が負担した保険料又は掛金で36−32により給与等として課税されなかったものの額は、令第183条第2項第2号又は第184条第2項第2号に規定する保険料又は掛金の総額に含まれる。
<一時所得の計算>
イ.法人負担部分も控除が認められるケース
(満期保険金150万円−払込保険料50万円*−特別控除50万円)×1/2=25万円
*25万法人負担、25万個人負担(給与課税済み)
ロ.個人負担(給与課税)部分しか控除が認められないケース
(満期保険金150万円−払込保険料25万円*−特別控除50万円)×1/2=37.5万円
*25万個人負担(給与課税済み)
法人が負担した保険料まで所得税計算上控除できるという取り扱いを巡っては納税者と課税庁側で裁判が行われており、一審、二審ともに納税者が勝訴している。(最高裁にて係争中)
ところが昨年の平成23年税制改正大綱において、従業員側で給与課税された保険料のみ一時所得の必要経費にできる旨の改正が明記され、平成23年6月30日付けで所得税法施行令183条第4項第3号が改正された。
また、この改正は平成23年6月30日以後に支払を受ける一時金等にかかる保険料等について適用されることとなっており、保険契約日が施行(6/30)前でも控除が認められないことになるので要注意。
所得税法施行令183条第4項第3号
4 第一項及び第二項に規定する保険料又は掛金の総額は、当該生命保険契約等に係る保険料又は掛金の総額から次に掲げる金額を控除して計算するものとする。
(省略)
三 事業を営む個人又は法人が当該個人のその事業に係る使用人又は当該法人の使用人(役員を含む。次条第三項第一号において同じ。)のために支出した当該生命保険契約等に係る保険料又は掛金で当該個人のその事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額若しくは山林所得の金額又は当該法人の各事業年度の所得の金額の計算上必要経費又は損金の額に算入されるもののうち、これらの使用人の給与所得に係る収入金額に含まれないものの額(前二号に掲げるものを除く。)
財務省にしてみればしてやったり。
課税回避の穴を華麗に塞いだといったところだろう。
ちなみに、今回の裁判や改正された規定に関しては出口(満期保険金)の話なので、入り口(保険料)の取り扱い=全額損金が認められたわけではない。
そもそも、当時からグレーゾーンな設計の商品だと考えられていたため、一般の生保会社では取り扱いをしておらず、販売数自体はそれほどなかったと記憶している。
保険は保障・貯蓄目的が大前提。節税目的で行うと火傷するのは目に見えている。
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国税庁HPにおいて10月31日、平成23年度税制改正に関する消費税法の改正資料が公開された(法案自体は既に6月に可決・成立)。
消費税法改正のお知らせ(平成23年9月)
内容は、ほぼこのコラムで紹介した税制改正大綱のとおり(赤字が実際の法案で修正された部分)
・免税事業者の要件の見直し(消費税)
現行制度では、課税売上高が1千万円を超えた場合に翌々期から課税事業者となるが、こうした制度を悪用した課税逃れを抑制する観点から、課税売上高が上半期(6ヶ月)で1千万円を超える場合には、翌期から課税事業者となるよう免税事業者の要件を見直す。
ただし、中小事業者の事務負担にも配慮し、課税売上高に代えて支払給与の額が上半期(6ヶ月)で1千万円を超えるか否かにより判定することもできることとされる。
(上記改正はその年又はその事業年度が平成25年1月1日以後に開始するものについて適用)
・仕入税額控除制度におけるいわゆる「95%ルール」の見直し(消費税)
現行制度では、事業者の事務負担に配慮する観点から、課税売上割合が95%以上の場合には全ての仕入れについて仕入税額控除が認められているが、制度の趣旨に鑑み、
この制度の対象者を、1年間の課税売上高が5億円以下の事業者に限定する。
(上記改正は平成24年4月1日以後に開始する課税期間から適用)
今回のお知らせのために用意されたパンフレットには、かなり細かい(施行令)部分も踏まえて図示してくれているので、正直実務に携わる者としてはありがたい。
というのは「条文ではこう解釈できるよな」という点を再確認できるからである。
しかしこういった資料を見ていると、この仕組みを一般納税者の方に理解しろというのはかなり酷な話だと感じる。
大きな改正が入るたびに税法というものが国民から遠い存在になっていっている気がして、正直誰かの陰謀かと思うほどである。
これでいいんだろうか?この国の税制は。
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今月発行した当事務所のメールマガジンにおいて、一部の外資系保険会社で販売しているガン保険の問題点について紹介した。
中嶋聡税理士事務所タックスニュース(月1回配信)
ガン保険について支払時の損金算入(費用計上)が認められているのは、一般的に解約時の返戻金が低額であるためなのだが、
一部の外資系保険会社で販売しているガン保険について解約返戻率が払込保険料の90%を超えるものがある。
法解釈的には資産計上すべきで損金算入するのはおかしいと感じるのであるが、国税庁の個別通達や質疑応答事例集では損金算入OKとの記述がある。
国税庁HP〜法人税個別通達〜
法人契約の「がん保険(終身保障タイプ)・医療保険(終身保障タイプ)」の保険料の取扱いについて(法令解釈通達)
「税理士は法律家であるから、通達ではなく法律に基づいて処理を行うべきである」とは、とかく通達に意識が向きがちな税理士を戒める言葉として大事な言葉であると思う。
しかしながら、今回のように法解釈的にはアウト(資産計上すべきもの)であるのに、通達ではセーフ(費用計上OK)としている場合、簡単に法律に従えとは言えない問題がある。
実際、裁判所によれば、法律上認められていなくても、納税者の権利救済の手段があるならばそれを講じるべきであったとして税理士の損害賠償請求を認めた判決もある。
具体的には、法律上の原則的な更正の請求期間(1年間)を過ぎた場合、実務上は嘆願書を提出して税務署側からの更正を促すことになるのだが、この嘆願について法律には一切規定されていない。
しかし、依頼を受けた税理士が嘆願手続きをしなかったことによって納税者が被った損害について税理士の損害賠償責任を認定したという判決である。
東京高裁 税理士に賠償命令 減額更正の嘆願も義務(週刊税ニュース)
今回のガン保険の問題に戻ると、法解釈上はアウトだが通達でそれを認めている場合、通常の法解釈に従うことは納税者に損害を与えてしまうことになる。
となれば、立法上の手当てがされていない以上、通達に基づいた処理を行う必要も出てくるのである。
黒は黒、白は白なら話は早いが、その間に広大なグレーゾーンが横たわっているのが税法の実情なのである。
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ほぼ日刊イトイ新聞 - クロネコヤマトの DNA
素晴らしい美談ではあるのだが、果たして財務省と折衝までして寄附金を無税にする(正確には指定寄附金の指定を得る)必要があったのかという気がしなくもない。
そこで邪推をしてしまおう。
寄附金は原則として寄附金の損金算入に限度が設けられている。
しかしながら限度が設けられているのは寄附の相手先を問わない一般的な寄附であり、
国や地方公共団体等に支出した寄附金はその全額を損金算入することが認められている。
つまり、わざわざ財団を設立する必要はなく国や被災した都道府県・市町村、はたまた日本赤十字社や中央募金会に寄附をすれば面倒な手続きを踏むことなく無税で被災地支援を行うことが可能なのである。
自前で作った財団の方が寄附の使途を人任せにせず決められるという意図があるのかもしれないが、インタビュー記事中にもあるとおり、
指定寄附金の指定の条件は公益性が担保されているかどうか、つまり私企業が寄附の受け入れ先である財団に対して何らかの指示をすることはできないのである。
「ヤマトがこの財団に寄付する段階で無税にしていただきました。
ただし、ここからあと、何につかうかについては、ヤマトはもう口出しをしない約束です。」
であれば、何故日赤や被災した県・市への寄附ではダメだったのか、財団を運営するにもコストがかかるだろうし、被災地の地方公共団体の方が地元住民のナマの声を聞いて必要なところに資金を割り振ることができるだろうし、などと考えると繁忙な財務省の担当者を巻き込んでまで、指定寄附金の指定を取る必要があったのかという気がしなくもない。。
非効率な事をしていると取られれば、単なる広告宣伝目的ととられかねないので、
これらの点についてはもう少し説明が必要だろう。
折角の善行なのだから。
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法人税の申告を市販の税務ソフトを使って行う場合に頭を悩ませるのが、マニアックな別表(法人税申告書の一部)の存在である。
というのも市販のソフトでは費用対効果の観点から、実務上使用する機会の少ない別表については作成機能を用意していないことが多いからである。
一方、国税庁が無償で提供しているe-taxソフトは、市販のソフトより使い勝手は悪いものの、全ての別表を作成することができる。
今回のコラムでは、本申告は市販のソフトを使いマニアックな別表だけe-taxソフトを使って電子申告をする方法を紹介したいと思う。(「その別表だけ紙で送ればいいんじゃないの?」というツッコミは無しの方向で・・)
1)まずは普通に市販のソフトで電子申告(その際、受信通知に表示されている受付年月日と受付番号をメモorプリントアウトしておく)。
2)e-taxソフトを立ち上げる。
3)利用者選択し、法人税申告書の新規作成
4)作成する帳票を選択する画面で一番下にある電子データの追加送信(法人税)の頭にある「+」をクリック。
5)「電子申告データ追加送信表」と追加送信したい別表にチェックマークを付ける(今回は別表10(7)を選択)。
6)任意の申告・申請等の名称をつけて「OK」。
7)申告する事業年度等の基本情報を登録すると帳票選択画面になるので、追加する別表をダブルクリックして内容入力。入力が終了したら作成完了して帳票保存。
8)続いて「電子申告データ追加送信表」をダブルクリックして入力。(当初申告データの受付年月日・・の欄は1)でメモした受信通知に記載されていた年月日番号を入力)
9)後は通常の電子申告の手続きと同様。
税理士が電子申告する場合は、
一旦申告データを「切り出し」→利用者ファイルを税理士のファイルに変更→切り出したデータを「読み込み」→「電子署名」→「送信」。
既にご存知の税理士先生も多いと思うが、備忘記録的に紹介してみた次第である。
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平成22年度の税制改正により、平成23年4月1日以後終了する事業年度から法人税申告時に租税特別措置法の特例を利用した場合には、「適用額明細書」を法人税確定申告書に添付することが義務化された。
順当に行けば今月申告の法人からということで、当事務所でも初めて「適用額明細書」なるものを作成した。
適用額明細書の記載の手引(国税庁HP)
そもそも、租税特別措置法(以下「措置法」)とは時限立法により政策的配慮から税法の特例的取り扱いを定めた法律であり、他の税法(法人税、所得税、消費税等)に対して優先的に適用されるものである。
例えば所得税には政策的に住宅取得を促進する目的で創設された「住宅借入金等特別控除(いわゆる住宅ローン控除 措置法第41条)」などがある。
ところが、政策的配慮とは言うものの、特定の企業や業界を補助する(有利な取り扱いを与える)特例が多く、以前から既得権益化・利権化しているという批判があった。
そのような批判に応えるべく、措置法の適用実態を把握し、適用実績が少ないものや特定団体を過度に優遇している規定の廃止を検討する材料とするため、適用額明細書添付義務化となったわけである。
実際措置法の中には、時限立法と言いながら2〜3年ごとに延長を繰り返す規定が多く、惰性で続いている規定も多いように思う。
今回の適用額明細書により各業界ごとの詳細な適用データが収集されることが期待できるため、政治家の先生方にはこのデータを今後の税制改正論議に十分活かしていただきたいと思う。
データを集めたものの活用されないのであれば、我々税理士の努力も報われないというものだ。
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タイトルとは直接関係ないが、先日ブログ(脱税・申告漏れ日記)で以下の事案を紹介した。
誤った指導で課税ミス 近江八幡市が滋賀県を提訴へ
事案の概要は、近江八幡市が滋賀県の助言に従って病院に課税した固定資産税が、本来は非課税のものだったため、還付に要した還付加算金等を請求する訴えを起こすというもの。
ブログにも書いたが固定資産税の課税権者は県ではなく、市町村なので、市町村が独自に調査して課税か非課税かを判断すべきものである。
それを県に助言を求めてそれが間違っていたから提訴するとか、市の担当者は相当面の皮が厚そうである。
これぞモンスター自治体。
この事案で頭によぎったのが、税理士の専門家責任で、税理士が納税者から税務相談を受けたり、申告業務を請け負ったりする場合には高度な善管注意義務が課される。
<民法 第六百四十四条>
(受任者の注意義務)
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
税理士の善管注意義務については、税理士が被告になる損害賠償請求事件等で度々問題になるが、その中でも業界内で衝撃が走った判例がある。
それが、無償で受任した修正申告と税務調査立会い業務に関して延納許可申請の助言が無かったとして税理士に損賠賠償義務を認めた、東京高裁平成7年6月19日の判決である。
この判例で興味深いのは、無償であるのはもちろんのこと、納税者が明確に依頼しなかった延納申請に関しても税理士に責任を認めたという点である。
確かに状況的には、相続税の納税が多額にのぼるため延納の助言をするのが当然だったのかもしれないが、相談を受けていないことまで責任を負わなければならないのは、厳しいものがある。
人助けと思ってした行為でも相手に損害を与えてしまえば、損賠賠償義務を負う。
この判例は、税に携わるものとして、たとえ無償・低廉な報酬であっても依頼を受けたからには全力で取り組まなければならないということ。
また、それが出来ないなら安易に相談に乗ってはいけないということを示唆している。
しかし、このような判例が続けば、好意で税務相談を行う税理士などいなくなってしまい、結果として無資格の税務に関する知識が不確かな者のアドバイスが広がってしまうことが懸念される。
<関連記事>
受任内容にとどまらない税理士の責任(鳥飼総合法律事務所)
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平成23年度税制改正法律案は国会にて審議中であるが、震災の影響により、大幅な内容変更が行われるものと思われる。
(もしくは23年は改正せずに白紙に戻して、24年でまとめてるなんて可能性も。)
そんな中、またしてもIMF提言。
日本は明確な財政健全化計画を IMF提言、消費増税も
震災の復興資金に充てるため消費税を15%にしろと。
以前から財政再建のため消費税の増税が必要との声はあった。
「日本は消費税引き上げ必要」IMFが声明
消費税非課税のまやかし(2010/5/31)
一方で、IMFに出向している財務官僚が外圧を利用して消費税増税を実現させるため、IMFに言わせているという話も。
IMF消費税15%提言報道は財務省のヤラセ!?
経済オンチの菅直人首相が 消費税15%提言 IMFに屈する恐怖
復興予算確保のため、増税は避けられない状況であるが、どの税金を何%上げるのかという問題が生じてくる。
「よく増税すると企業が海外に脱出するから、国際基準に税率を抑えるべきだ」という意見もあるが、
消費税に関してはこの問題は生じない。
税金の世界では「納税義務者=税負担者」を直接税、「納税義務者≠税負担者」を間接税と定義しており、
前者の代表が所得税、法人税、相続税等、後者の代表が消費税である。
つまり消費税については、納める義務があるのは事業者(個人事業者、法人)であるが、税負担者(お金を負担する人)は我々一般消費者になるのである。
事業者はお店に商品を買いに来た消費者から商品価格に消費税を転嫁(上乗せ)した代金を受け取ることになる。
その後、受領金額に基づいて計算された売上に係る消費税から仕入れに係る消費税を差し引いた金額を国に納付することになる。
例)小売業者の売値210万円(税込)、仕入値105万円(税込)
・お金の流れ
「製造業者」←(商品代金100万円+消費税5万円)←「小売業者」←(商品代金200万円+消費税10万円)←「消費者」
この場合
1)製造業者が国に納める消費税5万円
2)小売業者が国に納める消費税10万円−5万円=5万円
3)最終消費者が負担する消費税10万円(小売業者に支払った消費税額)
1)+2)=3)
この仕組みを多段階累積控除という。
消費税が5%だろうが15%だろうが企業は商品代金に上乗せされた分の消費税を国に送るだけであるから、税率が高くなっても自らの懐は痛まない。
したがって、消費税率が上がれば企業負担が増えるから海外に移転するというのは間違い(※)。
税負担を理由に海外移転が進むのは直接税である所得税や法人税の話である。
そんなこともあってか、この提言。
法人2税撤廃など税制改革へ提言 関西同友会
確かに必要な流れなのだが、このタイミングで利害関係者が言うと説得力0だ。
消費税増税だけにしとけばよかったのに・・・。
※親会社や元請の力が強く、消費税の税率が上がった場合にそれ以上の値下げ要求をされた場合、間接的に下請け企業の資金負担が増えることがあるが、
それは消費税法の問題ではなく、独占禁止法等の問題。
<関連記事>
法人税を減税するワケ
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東北地方太平洋沖地震関連の税務情報としては、先日ブログに寄附を行う支援者側の情報としてアップした。
<中嶋聡税理士事務所ビジネスマネジメントブログ>
義援金等に関する税務上の取扱い
今回は、被災者側の税務情報を紹介したいと思う。
国税庁HPの以下のページに情報がまとまっている。
<国税庁HP>
東北地方太平洋沖地震関連の国税庁からのお知らせ>災害に関する主な税務上の取扱いについて
<法人・個人事業者共通>
・災害により滅失・損壊した資産等・復旧のために支出する費用は法人、個人事業主の所得計算上費用の額に計上することができる(資本的支出とされるものを除く)。
・その他、従業員等に支給する災害見舞金品、災害見舞金に充てるために同業団体等へ拠出する分担金等も同様。
<法人>
・取引先に対する災害見舞金等→交際費等に該当しないものとして取り扱う。
・取引先に対して行う売掛金等の免除等→寄附金又は交際費等以外の費用として損金の額に算入される。
・取引先に対する低利又は無利息による融資→通常収受すべき利息との差額は、寄附金に該当しないものとして取り扱う。
・法人が、不特定又は多数の被災者を救援するために緊急に行う自社製品等の提供→寄附金又は交際費等に該当しないもの(広告宣伝費に準ずるもの)として損金の額に算入される。
・災害による損失金(災害損失欠損金額)がある場合には、その事業年度が青色申告書を提出しなかった事業年度でも、災害損失欠損金額相当額は、その各事業年度において損金の額に算入される。
<個人事業者>
・個人が支払を受ける災害見舞金→社会通念上相当と認められるものについては、課税しない。
・災害により低利又は無利息により生活資金の貸付けを受けた場合の経済的利益→その返済に要する期間として合理的と認められる期間内に受ける利息相当額の経済的利益は、課税しなくて差し支えない。
・被災事業用資産の損失 (被災事業用資産の損失の金額)がある場合には、その損失の生じた年分が青色申告書を提出しなかった年分であっても、その被災事業用資産の損失金額相当額は、その年分の総所得金額等の計算上控除する。
<その他>
・農地等に係る納税猶予の特例の継続適用(相続・贈与税関係)
・災害義援金の受取書(印紙税関係)
・被災自動車に係る自動車重量税の還付(自動車重量税関係)
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* 申告・納期限の延長
* 被災者の雑損控除、災害減免の特例等について
* 災害を受けたときの納税の猶予等の取扱い
* 消費税の届出に関する特例
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昨年から一部の外資系保険会社等で盛んに販売を行っている低解約返戻金特則付き逓増定期保険を使った節税方法が話題となっているようだ。
逓増定期保険自体は、今までも法人の決算利益対策の商品として使われていた経緯がある。
以前は保険満期時の年齢を調整することで払い込んだ保険料の全額損金(法人税法上の費用)計上ができていたので、決算で利益が出そうなときに保険料を支払って費用にしておいて、その後解約返戻金がピーク(だいたい90〜95%ぐらいか)になったところで解約するという手法がとられていた。
解約すると逆に雑収入が計上されるので課税の繰延効果しかないのだが、雑収入が計上される事業年度でその解約返戻金を使ってまた逓増定期をかけ直すといったことが行われていたようだ。
なんだか自転車操業みたいでこれ自体もどうかな〜といった印象である。そもそも節税目的の保険加入を課税庁は認めていないはずで、前提として保険契約には保障のためという目的があり、結果として税金が安くなったよね。という本音と建前を使い分けるスタンスが必要なのである。
上記のような手法があまりにも目に余ったのだろう。通達改正でいまや逓増定期保険は一定割合の資産計上(費用にならない)が強制されることとなり、その節税効果が大幅に失われたのである。
一方、今回話題になっている低解約返戻金特則付き逓増定期保険とは保険契約後の最初の数年(4〜5年)は解約したときの返戻金が非常に少ない(払込保険料の0〜25%程度)が、その数年の特則期間を過ぎると一気に解約返戻金が90%台にまで上昇する商品である。
これでどうやって税金を安くするのかであるが、まず法人で契約を行い当初数年の低解約返戻期間は法人が保険料の払込を行う。そのとき現在の通達では逓増定期に関して最低でも50%は資産計上が必要とされているので、費用になるのは払込保険料の半分である。
そして、低解約返戻期間が終わり90%台の解約返戻金が保障される直前にその契約を個人(社長)に売却するのである。
このときの契約の売買対価は(所得税法基本通達36-37)において解約返戻金の額とされており、払込保険料の25%程度で売買が可能なのである。このとき法人側では長期前払費用等としてそれまで法人の貸借対照表に資産計上されていた(50%部分の)金額との差額が譲渡損失として費用計上される。
そして個人に渡った保険契約は個人で一回保険料を支払い、低解約返戻期間が終わり解約返戻率がピークを迎えたところで解約する。
このとき買取金額と解約返戻金の差額に所得税が課税されるような印象であるが、所得税法(所得税法基本通達34-4)ではあくまで「解約返戻金(収入)−払込保険料総額(必要経費)」で所得金額を計算するとしており、個人の所得税計算上、法人が支払った保険料も所得金額計算上の必要経費として認めることとしている。
そうなると逓増定期保険の場合、解約返戻金が払込保険料を超えることはまずないため、課税される所得金額が生じないことになる。
このように法人の利益を圧縮しつつ、個人にも所得税が課税されないようにするのが、この保険商品の仕組みなのである。
が、個人的にはちょっとやりすぎであるように思う。通達はあくまでも通達で法律で確定した取り扱いではないのだから、通達制定時に想定していなかった取引が行われた場合、裁判等でひっくり返される可能性は十分にある。
裁判等が起こされなかった場合でも、このような目に余るというか行き過ぎた節税が普及してくると、早晩課税庁側で取り扱いの変更が行われることになるであろう。
「脱税」では無いが、法律の穴をつく節税は「租税回避行為」と呼ばれ法改正の対応が直ちに行われる。いまは合法でもこのようなリスクの高い商品を自分のお客さんに紹介する気にはならないというのが率直な感想だ。
甘い話には常に裏があると考えるべきだろう。
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